秘め事





はらり、ひらり。
静かに花びらの如く、雪が舞う日――。



詳しいことは何も聞かされないまま、ただ弁慶さんに手を引かれる歩いていた。
私は何が何だかわからないまま、弁慶さんにこの場所に連れてこられていた。

「あ、あの……弁慶さん!!」
「しっ……あまり大きな声を出すと皆に見つかってしまいますよ?」

指を口元に当てて、声を潜めて弁慶さんは言った。声は真面目さを含んでいるが、その顔はどこか楽しそうだ。
弁慶さんに言われて私は慌てて口を閉じた。


(……って、そうじゃなくて!!)


つい弁慶さんのペースにのせられていることに気づいて慌てて聞いてみた。
うっかり気を抜くとすぐに巻き込まれてしまう。


「……どうしてここに?」
「どうしてだと思います?」


笑みを浮かべたまま弁慶さんはすぐに答えてくれない。
考えても答えが出るはずもなく、私は首を傾げるしかできなかった。


「……弁慶さん、質問を質問で返すのは卑怯ですよ?」
「……君にそんなことを言われるとは思いませんですよ」


わずかに驚いたような顔をした後、弁慶さんは面白そうに笑っていた。
何だか馬鹿にされているようで、私は弁慶さんを軽く睨みつけた。


「すみません、そんな顔をしないでください。可愛い顔が台無しですよ?」
「もとからこんな顔ですから」


子供みたいだ、と思いつつも私は顔を逸らした。その直後くすっ、と小さな笑い声が聞こえてきた。
困ったような笑みを浮かべながらも、実際困ってない弁慶さんの姿が想像できた。


「怒らせてしまったようですね……」
「…………」
「実は君をここに連れてきたのはあるものを見せたかったからなんです」
「……あるもの?」


やっと本題を切り出してきた弁慶さんに、私は思わず顔を向けた。
それを見て弁慶さんはにっこりと笑みを浮かべた。


(し、しまったっ!!)


そう思ったときにはもう遅かった。
悔しい気持ちはあるものの、弁慶さんが言う『あるもの』が気になってしかたがなかった。
こんな寒い日に何があるのか、と首を傾げるばかりだ。


(いったい何があるというの?)


再び弁慶さんに手を引かれて歩き出した。
少し歩いたところで立ち止まってある場所を示された。


「君に見せたかったものは……あれですよ」
「……わぁ、綺麗――」
「気に入ってくださいましたか?」
「はい。あれって……椿ですか?」


花の美しさに私は今までのことを忘れて素直に頷いていた。
すぐ傍で弁慶さんの声が聞こえていたが、それすら気にならないほど見入っていた。


「えぇ、あれは白椿ですよ」
「白椿?」
「他は紅椿なのに、あの場所だけ白椿なんですよ」
「そうなんですか、綺麗ですね」


しばらく見ていた私は、満足したところで振り返った。
弁慶さんにお礼を言おうと勢いよく振り返った瞬間、予想外の近さに絶句した。


「弁慶さん、素敵なものを教え……!?」
「いいえ、気にいてくださってよかったです。おや?どうしました?」
「あ、あの……」
「ふふふ、顔が赤いですよ?」


何かを企んでいるような、楽しそうに弁慶さんが笑みを浮かべていた。
それを直視して、私は頬が熱くなるのを感じた。


「べ、弁慶さんっ!?」
「……まったく、君はいけない人ですね――」


何かを言いたいのに、うまく言葉が出てこない。
そんな私の心中を知ってか知らずか、弁慶さんは耳元で囁いた。


「このことは皆には秘密にしておきましょう」
「……えっ?」
「二人だけの秘密ですよ?」


口元に指を当てて、にっこりと弁慶さんは微笑んだ。
何故か私はそれには逆らえず、首を縦に振っていた。



はらり、ひらり。
花びらのように、雪が静かに舞っていた――。








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描いていただいたイラストを見てこんな場面が浮かびました。
えぇ、弁慶さんですから?逆らわせずに外に連れ出すことも可能です。
狙った獲物は逃がしませんよ。(笑)

特に相手を考えていたわけではありません。
よって公式ヒロインである望美ちゃんでもよし、別ヒロインさんでもよし。
お好きなようにお考えくださいませ。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。
弁慶さんがニセ者ですみませんでした。(土下座)


2008.1.4    水原 琳