ドリーム小説






いつもの二人


が市に出かけるという事件から早一ヶ月――。
六合によってお出かけ禁止令を出されていたは我慢の限界にきていた。










      いつもの二人










今日ものもとを訪れていた六合は、いつもの場所に腰を下ろして庭を眺めていた。
一方は部屋のほぼ中央に敷かれた茵に腰を落ち着けていたのだが、普段は書物に向けられるその視線はずっと六合に向けられている。
六合がのもとを訪れてからずっとこの調子だ。

がずっと何かもの言いたげな視線を自分に向けているのはわかっているのだが、余程言いにくいことなのか、一向に何も話そうとはしない。
いいかげんこの視線に耐えるのが苦痛になってきた六合は、深々と息を吐き出した。

そして、と目線を合わせた――。

――」
「はい……」

急にこちらに振り向いたことに多少驚いたであったが、目線はしっかりと六合を捕らえたままであった。
その瞳に映る六合はどこか苛立っているかのように見える。

「何か言いたいことがあるのではないか?」
「……っ!?」

指摘されてわずかに体を強張らせた。
確かに言いたいことはある。しかしそれをどうやって切り出したらいいのか、ずっと考え込んでいたのだ。

言いたいことはただ一つ――。

だが、それを言葉にするのは何故か躊躇われてしかたがなかった。
の瞳に確かに動揺が走ったことを見逃さなかった六合はさらに続けた。

……」

再度名を呼ばれて観念したのか、そっ、と静かに肩の力を抜いた。
それからすっ、と立ち上がり、六合の目の前までくるとその場に腰を下ろした。再び六合の顔を見つめた。

「ねぇ、六合……。そろそろ……」
「だめだ……」

せっかく覚悟を決めて告げようとしたの言葉は、六合によって遮られてしまった。
六合としてはが言わんとしていることが容易に判断できたため、全てを言わせる前にすっぱりと綺麗に言い切った。
この六合の言い方にはさすがのも少しばかり怒りを覚える。

「……まだ何も言っておりませんわ」
「……」

わずかにふて腐れて抗議するの姿を見て、六合は不覚にも頬が緩んでしまった。
普段は穏やかに微笑んでいることが多いからこそ、こんな風に少し拗ねたような顔をされてしまうと余計に可愛く見える。

「何も言わなくても、が言いたいことはわかる」
「えっ?」
「『外へ出たい』だろう?」
「……」

ずばり、と指摘されては沈黙するより他はなかった。
自分を見つめたまま絶句している恋人を見て、やはりそうか、とため息を吐くと共に、ニヤリ、と口元に笑みを浮かべていた。

、外に出たいのか?」
「……出たいですわ……」
「どうしても……か?」
「……どうしてもですわ。でも……出してはくださいませんのでしょう?」


外に出たいのか、と聞かれれば、出たい。
どうしても、と聞かれれば、どうしても。

そう思い、言ったところで六合が簡単に了承してくれるわけもない。

沈黙を肯定と受け取ったはわずかに悲しげに眉を寄せると、素早く立ち上がった。そのままくるり、と踵を返して部屋の奥へと向かった。
いや、正確には向かおうとした。

「……きゃっ!!彩W!?」

丁度一歩踏み出そうとしたところで腰を引かれて、気がつけば六合の腕の中にいた。
身を捩って何とか抜け出そうと試みたが、さらに強く抱きしめられて動けなくなってしまった。

「……彩W!!放してください!!」
「断る……」
「彩W!!」

いくら抗議しても頑としてを放そうとはしない。それどころか放すまいとの髪に顔を埋めて囁いた。

を放すことはできない――」
「彩W……」
「放せば逃げるだろう?」
「それは……」
「だから放さない……」

いつになく真剣な声音で囁かれて、は頬が熱くなるのを感じた。
そう言われては大人しくするしかない。
何よりこういった行動を起こした六合が、そう簡単に諦めてくれたことは今まで一度もない。

自分の腕の中でやっと大人しくなったに、そっ、と安堵のため息を吐いた。
そしてを拘束していた腕の力を緩めた。緩めたといっても未だには六合の腕の中にいる。

「どうして……」
「……何だ?」
「どうして外へ出てはだめですの?」
「……先日、やっと熱が下がったばかりだろう……」

の肩がピクリ、と動いた。
抱きしめている腕から振動を感じ取った六合は、呆れ混じりのため息を吐いた。




が市に出かけてから数日後――。
長時間外に出たためなのか、が熱を出して倒れてしまったのだ。
それに慌てたのはほかならぬ、六合だ。
普段は昌浩の護衛として行動を共にしているのだが、この時ばかりは主である晴明さえも無視してずっとに付き添っていた。

の見舞いに訪れた昌浩やもっくん、他の神将たちは我が目を疑ったらしい。
普段は寡黙な六合が、心配のあまり落ち着いていられないと甲斐甲斐しく看病しているのだ。
その姿を見て、昌浩やもっくん、他の神将たちは呆れて何も言えなかったとか――。



そのこともあって、六合はまた倒れられたりしては心配だ、とばかりに反対していたのだ。

「……もう大丈夫ですわ。ですから……」
「だめだ!!」
「彩W!!」

大丈夫だと言い張るに対して、六合は頑として譲ろうとはしない。
どうしても許可を出してくれないことに苛立ちを感じて、は振り返った。が、見上げた先にあった六合の表情は、何処か切なげだった。
重々しく吐き出された六合の言葉を聞き、は何も言えなくなってしまった。

「……これ以上……心配をかけるな……」
「……っ!!」
「俺は……お前を!!……失いたくはない――」
「……ごめんなさい……」

六合にそんな思いをさせているなど、まったく知らなかったはひどく胸が痛んだ。
無意識のうちにぽつり、と謝罪の言葉が出てきていた。
顔を俯かせて呟いたの言葉が聞こえた六合は、を抱きしめている腕にわずかに力を入れた。

「だから……」
「だか……ら?」
「後三日、大人しくしていてくれ……」
「……」
「三日たったら、の好きなところへ連れていってやる――」
「……本当ですか?」
「あぁ……」

六合の言葉が信じられずに、思わず顔を上げて確認してしまった。
勢いよく顔を上げて自分を見つめてくるに、苦笑混じりに肯定の言葉を返した。その瞳には少し呆れた表情も見える。
それを聞いたは今までとはうって変わって、嬉しそうに笑みを浮かべた。

「本当ですのね?後三日たったら、どこへでも連れていってくださるのですね?」
「あぁ……」
「どうしましょう?どこがよろしいのでしょうか?」
と共に行けるのなら、俺はどこでもいいが……」
「……そうですわね。彩Wと一緒でしたら、どこでもかまいませんわ」
穏やかな笑みを浮かべて、は六合に抱きついた。その珍しい行動に少しばかり動揺した六合であったが、どこか嬉しそうに微笑んだ。
嬉しさのあまり一人ではしゃいでいたであったが、六合の言葉を聞きいて場所などもうどうでもよくなっていた。





六合と共にいられるのであれば、どんな場所でもかまわないのだと――。
二人でいられることが、一番嬉しいことなのだと――。





「ねぇ、彩W。約束、忘れないでくださいね?」
「あぁ……忘れない」







こうして緩やかな時間が流れていく。




そんな……いつもの二人――。






















何ですか?これは!!
書いた本人が言うべきことではないのですが……。
そう言わずにはいられません!!
いったい何が書きたかったのやら……。(汗)

どうも本編がシリアスになっている反動で短編は甘々になってしまうようです。
う〜ん、どうも脳が甘々の話を書け―と訴えておりまして。(そんなバカな)
おかげで本人も驚きの状態に!?
何か知りませんが、痴話げんか→仲直り=甘々という形に出来上がっておりました。
こんなに甘い話って初めてではないでしょうか?ほのぼのはよくあるのですが……。
普段の二人はこんな感じだと思ってください。二人っきりのときはです。
ともかく楽しんでいただけたのでしたら嬉しいですvv

ちなみにこのお話は本編「優しい瞳」の6 秘密と7 求婚の間の話になります。
ちゃっかりお出かけ禁止令は実行されてましたということで。(笑)

2005.11.4   水原 琳










おまけの話 番外編


琳「はぁ〜、何かどっと疲れた……」

*背後にどんより重いオーラが漂っております。

???「何だかお疲れだな〜〜」
???「そうだね〜〜」
琳「んっ?……何でいるわけ?昌浩、もっくん」

わずかに顔を引きつらす琳。

昌浩「何でって言われてもねぇ?」
もっくん「なぁ?」
琳「何よ、それ……」

重々しくため息を吐く琳。

琳「まあ、いいわ。せっかく出てきたんだから、何か語っていきなさい」
昌浩「何かって?」
もっくん「そうだな〜。昌浩、の見舞いにいったときのことを語ったらどうだ?」
昌浩「様の?」
もっくん「そうだ。あの時の六合がすごかったよな〜〜」
昌浩「うん、すごかったよね。太陰や玄武は固まってたし、俺だってその場にいてもいいのか迷ったし……」

*二人が語っている間、琳さん呑気に休憩中――。

もっくん「だがな、昌浩。お前も人のこと言えないぞ?」
昌浩「えっ!?」
もっくん「お前が彰子のことを心配してるときもあんな感じだぞ?」
昌浩「嘘!!」
もっくん「本当だ。天一と朱雀に引けをとらないぞ?」
昌浩「うわ〜、どうしよう?俺、あんな風だったんだ……」

軽くショックを受けている模様の昌浩。

もっくん「まあ、何してもだ。オレは馬に蹴られるのはごめんだ」

何気に自己完結させる物の怪。

もっくん「っと、綺麗にまとまったところで……お〜い、琳。終わったぞ〜〜」

休憩を中断させて戻ってきた琳。

琳「あれ?もう終わったの?」
もっくん「あぁ、綺麗にまとまったぞ?」
琳「では最後の締めと参りましょうか?」
もっくん「おう!!」

*昌浩は軽く放置されてます。

もっくん「ここまで読んでくれた皆、ありがとな!!」
琳「これからも二人をどうぞ温かい目で見守ってやってください」
もっくん「終わったな。帰ろうぜ」
琳「そうだね〜、帰ろうか?」

その場を後にする琳ともっくん。





その数分後――。

昌浩「……!!琳?もっくん?」

やっとショックから目を覚ました昌浩。

昌浩「もしかして置いてけぼり?」

またしても軽くショックを受ける昌浩。

昌浩「あっ、あはは……。帰ろう……」

*疲労の色が見えておりますよ?昌浩。

昌浩「あっ、ここまで読んでくれた皆、本当にありがとう。これからもよろしくお願いしますっ!!と」

足早に去っていく昌浩。




ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。