ドリーム小説
新春☆羽根つき大会in安倍家
新しい年が明けた宮中では慌しく年始の行事が執り行われていた。が、それもやっと無事に終わり、ゆったりとした日々が流れていた――。
新春☆羽根つき大会in安倍家
安倍邸の自室で昌浩は疲労困憊といった顔で座り込んでいた。いかにも疲れました、という雰囲気で座り込んでいる昌浩を心配した彰子が声をかけた。
「昌浩、大丈夫?休んだほうが……」
「大丈夫だよ。新年早々寝てばかりもいられないし」
「そう?」
あくまでも大丈夫だと言う昌浩を信じて彰子は大人しく引き下がった。もっくんは耳の後ろを前足でかりかりと掻きながら、その様子を見ていた。
何故昌浩がこんなにも疲れているかというと、年末年始は様々な行事や決まりごとがあって更に宮中ではそれを上回る行事が連日控えている。準備を進める役人たちの忙しさは普通の倍以上はある。
更にその中でも忙しいのが、昌浩のように実際に動き回る下っ端の役人たちなのだ。おかげ年末年始は宮中をあっちへこっちへと走り回っていた。気づいたときには年が明けていたという。
「まあ何はともかくだ。無事に終わったんだからゆっくりしとけや」
「うん、そうするよ」
素直に頷いた昌浩は寛ぐ体勢とった。と同時に御簾の向こうから声がきこえてきた。
「こんにちは」
声とともに部屋に入ってきたのは、六合の恋人として最近皆に認識されたばかりのだった。もちろんその後ろには恋人の六合が控えている。
突然現れたを見て三人とも驚いた表情を浮かべている。昌浩にいたってはまぬけな格好のまま固まっていた。彰子はすかさず尋ねた。
「様?どうなさったのですか?」
「新年のご挨拶に伺ったのです」
「そうだったのですか」
彰子の隣に腰を下ろしたは穏やかな笑みを浮かべて答えた。六合はからわずかに離れた位置に腰を下ろした。必然的にもっくんの隣に腰を下ろすことになった。
「どこかへ出かけていったと思ったら、を迎えに行っていたのか」
「あぁ。新年の挨拶に伺いたいと言っていたからな」
「そうか」
もっくんの断定的な物言いに六合は抑揚に欠けた口調で答えた。
それぞれ会話が進んでいる中、昌浩は未だに固まったままの状態だった。そのことに気づいたが彰子に尋ねた。
「ところで彰子様、昌浩殿はどうなさったのですか?」
「えっ?」
に指摘された彰子は昌浩を見た。二人の姫君に見つめられた昌浩はどうしたらいいのか唸っていた。それを見たもっくんはやれやれ、とため息を吐き、助け舟を出した。
「昌浩はが突然現れたもんだから、驚いてそのままの状態なんだ」
「まあ、そうでしたの。それはごめんなさい。でも驚かせるつもりはありませんでしたのよ?」
「い、いえ。謝らないでください。勝手に驚いたのはこっちなんですから」
「そうだぞ、。昌浩が悪いんだからな」
もっくんの説明を聞いたは即座に謝った。慌てたのは昌浩で、とんでもないといった顔で否定した。それに便乗してもっくんは言った。
喜々として言うもっくんにさすがにちょっとむっ、とした昌浩は、もっくんの後頭部をべしっ、と叩いた。叩かれたもっくんは床にべしゃっ、と顔をぶつけた。
もっくんは顔を床につけたまま、怒りにふるふると肩を震わしていた。そして勢いよく顔を上げた。
「何するんだ!!晴明の孫!!」
「孫言うな!!もっくんが悪いんだからね!!」
「オレが何をしたって言うんだ!!」
「なんで、俺のせいになるんだよ!!」
「お前以外に誰がいるって言うんだよ!!」
いつもの如く始まってしまった二人の言い合いをと彰子は苦笑いを浮かべて見守っていた。お互いに気が済んだのか二人はそこで言い合うのをやめた。それを確認したは改めて挨拶をした。
「では、改めまして。新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
「「お、おめでとうございます。こちらこそよろしくお願いします」」
丁寧に頭を下げて挨拶するに、同じように昌浩と彰子は慌てて頭を下げて、二人声を揃えて挨拶した。
「「えっ?」」
「あら?」
二人は不思議な顔をしてお互いを見つめた。も同じように不思議な顔をしている。しばらく見つめ合っていたが、どちらともなく笑い出した。もあらあら、といった顔で二人を見守っていた。
そんな和やかな雰囲気が流れる中――。
晴明が静かに部屋の中に入ってきた。そのことにいち早く気づいた昌浩が声を上げた。昌浩の声に皆は振り向いた。
「じい様。どうかしたんですか?」
「いや、何ちょっとな……。んっ?おぉ、これは様。気づきませんで」
「いえ。お邪魔いたしております」
その場に腰を下ろした晴明は少し何かを考え込むとおもむろに口を開いた。
「様もこうしてお越しくださっていることじゃ。そうじゃの〜〜、『羽根つき大会』でもやろうかのぅ〜〜?」
「はい?」
あまりにも唐突なことに、皆唖然としていた。かろうじて昌浩だけは尋ね返すことができた。
「何を呆けておるんじゃ?『羽根つき大会』じゃよ。おもしろそうだとは思わんか?」
「それって……いったい誰がやるんですか?じい様」
「それはもちろん昌浩、お前達にきまっておるじゃろう」
当然といった顔で晴明は言い放った。これには昌浩も返す言葉がなかった。
もちろん『昌浩たち』というからには、もっくんや六合たち神将たちも含まれている。
「まあ、羽根つきですか?何だか楽しそうですわね」
昌浩たちの心境など知る由もなく、は笑みを浮かべていた。
ということで――。
安倍家の庭で『羽根つき大会』が催されることとなった。
肝心の参加者はというと……ご存知安倍晴明の末孫・昌浩。
その愛らしい姿に定評がある物の怪こと愛称もっくん。
お元気台風娘の太陰。その太陰に振り回されている玄武。
晴明に無理やり参加させられた青龍。
姫の恋人である寡黙な神将・六合。
楽しいそうだと即参加を決定した、強くて美人の勾陳。
最後に恋人である天一にいいところを見せたい朱雀が参加。
計八人による勝ち抜きの試合が行われることとなった。
本当は天一も参加しようと思っていたのだが、天一が怪我をすることを恐れた朱雀によって止められてしまったのだ。恋人である朱雀に止められてはしかたがないと思い、天一は大人しく朱雀を応援することに決めた。
天后も大会には参加せずに皆の応援をすることにした。応援するものが一人もいないのはさすがにおかしいだろう、ということらしい。準備が整ったところで一回戦目・第一試合が始まろうとしていた。
大会進行兼実況を彰子、解説には晴明とを迎えていた。
第一試合――昌浩対朱雀。
「両者前に出てきてください」
彰子の声とともに昌浩と朱雀が前に出てきた。お互いを見据えてほのかに闘志を燃やしていた。
「ついに始まりましたね。二人のどちらが勝つと思われますか?晴明様」
「うむ。いやはや勝負はやってみないことにはわかりませんからな〜〜」
曖昧な答えを述べる晴明は気のせいかどこか楽しそうだ。晴明の言うことに納得した彰子はにも同じように尋ねてみた。尋ねられたは困ったような笑みを浮かべながら答えた。
「そうですね。様はどう思われますか?」
「そうですわね。お二人とも頑張って欲しいところなのですが、そういうわけにもいきませんものね。
晴明様がおっしゃるように勝負が終わるまではわかりませんわ」
「はい、お二人ともありがとうございました」
会場のほうに目線を向けると、二人は一歩も引かないといった感じでお互いに見据え続けていた。ふっ、と笑みを浮かべた朱雀は勝ち誇ったような顔で宣言した。これには負けないと昌浩も言い返す。
「昌浩、いくらなんでもこればかりは手加減はできないからな」
「俺だって……手加減できないからな。絶対勝つ!!」
どちらも一歩も引かずに睨みあっている。そこへ試合開始の合図の鐘が鳴った。
「さあ、先攻は昌浩選手です。対する朱雀選手はどう出るのでしょうか?」
彰子の実況を聞きながら、昌浩は構えた。そして羽根をつこうとしたそのとき、両者に声援が送られた。
「昌浩、頑張ってね」
「朱雀、怪我だけはしないでくださいね」
「うん、絶対に勝つから!!」
彰子の声援に力強く答える昌浩に対して、朱雀はすかさず天一のもとへと駆け寄った。
「バカだな、天。俺がそんな怪我をするわけないだろう?」
「でも朱雀、私心配で……」
試合のことなど忘れて二人の世界に入ってしまった朱雀と天一。不運にも朱雀の対戦相手となってしまっていた昌浩はどうしたらよいものか、困りきった顔でその場に立ち尽くしていた。
「えっと……晴明様、この場合どうしたらよいのでしょう?」
「晴明様、どうぞ」
「おぉ、すまんな」
実況を担当している彰子も困り果てて晴明に尋ねた。尋ねられた晴明は天后に入れてもらったお茶を受け取り、呑気に啜っているところだった。
「あの、晴明様?」
「んっ?まあ、朱雀もあの状態ですし、昌浩の勝ちでいいじゃろう」
「じい様、そんなんでいいんですか?」
彰子の質問に当たり前といった様子で答える晴明に、昌浩が呆れたような顔で答えた。
「昌浩や、そんなことを言うのなら二人を止めてみるか?」
「いえ、遠慮しておきます」
晴明に言われて昌浩は朱雀と天一を見た。が、さすがに馬に蹴られるのはごめんだ、と思った昌浩は大人しく引き下がった。
決着がついたところで彰子が高らかに宣言した。
「一回戦目・第一試合は朱雀選手の試合続行が無理なため、昌浩選手の不戦勝といたします。
続きまして第二試合、太陰対玄武の試合を行いたいと思います。両選手は出てきてください」
昌浩と入れ違いに太陰と玄武が出てきた。戻ってきた昌浩はまだ納得していない顔でもっくんの横に腰を下ろした。
「何か納得いかない……」
「まあ、そう言うな。勝ったんだから」
「それはそうだけど……」
顔を顰めながらまだぶつぶつと文句を言っていた。その前方ではやる気満々の太陰と早く終わってくれと言わんばかりの玄武が試合開始の鐘が鳴るのを待っていた。
「玄武、手加減しないからね!!」
「なんで我がこのようなことを……」
二人の会話はまったくと言っていいほどかみ合っていない。は声を上げて二人に声援を送った。
「二人とも頑張ってくださいね」
「まかしといて!!絶対に勝ってみせるから!!」
の声援を受けて太陰がますますやる気になっていた。玄武はわずか頷いて答えた。と同時に試合開始の鐘が鳴った。
「さあ、玄武行くわよ!!」
かけ声とともに先攻の太陰が目にも留まらぬ速さで羽根を打った。構えていた玄武はそれを見てギョッ、とした。容赦なく自分に向かってくる羽根を急いで避けた。
あまりの速さに玄武は思わず声を上げた。
「太陰、何をするのだ!!」
「何って、試合に決まってるじゃない!!」
「だからと言って、あんな風に打つものでもないだろう!!」
「何ですって――!!意地でも打つなさいよ!!」
「無理に決まっているだろう!!」
玄武は次から次へと打ってくる羽根を器用に避けながら、抗議している。太陰の打つ羽根のすごさにしばし実況席はしん、となった。
「す、すごいです!!何なのでしょう?あの速さは!!まったく見えません!!」
「様、見えましたか?」
「いいえ。まったく見えませんでしたわ」
彰子にもにもまったく見えない速さで飛んでいく羽根。どうしてこんなにも速いのか気になった彰子は晴明に説明を求めた。
「解説の晴明様、説明をお願いします」
「うむ、それはですな――」
「「それは?」」
「太陰は風の神将……それ故に羽根を打つときに無意識に風を起こしているんじゃろう」
「な、なるほど」
「でも晴明様、それはよろしいのですか?危険なのでは……」
晴明に納得した彰子だったが、はあることに気づき尋ねた。しかし晴明の返答は至って呑気なものだった。
「なぁに、玄武が相手なら心配はいらんでしょう。玄武も神将じゃしのぅ〜〜」
それを聞いた昌浩、もっくん、青龍、六合、勾陳は即座に心の中で突っ込んだ。
(((((いや、そういう問題じゃないだろう……)))))
そうこうしているうちに試合終了の鐘が鳴った。
「はい、ここで試合終了です。結果は誰がどう見ても圧倒的に太陰選手の勝利です!!
おめでとうございます!!」
「やった〜〜!!玄武に勝ったわ!!」
「初めから勝負になってないだろう……」
大喜びする太陰に対して、玄武は疲れの色を見せながらぽつり、と突っ込んだ。その声を聞き逃さなかった太陰は素早く玄武に詰め寄った。
「何ですって――!!もう一度言ってみなさいよ!!」
「た、太陰。そう揺するな」
太陰は玄武を前後に揺らしながら怒り声を上げている。揺すられている玄武はあまりにも強く揺すられているので、頭が痛くなってきた。
二人を無視して大会は順調(?)に進んでいった。
「続いて一回戦目・第三試合、もっくん対青龍の試合です。両選手は前へ!!」
名を呼ばれたもっくんは少し顔を顰めたがすっ、と前へ出た。青龍自身初めは出るつもりはなかったが、しぶしぶといった感じで前に出てきた。
「まさか俺の相手がお前だとはな〜〜」
「ふん、なぜ貴様の相手などしなければならない」
「なんだ〜〜、負けるのが怖いのか?」
「誰が貴様などに負けるものか」
何やら試合前から険悪な雰囲気が漂っている。お互いに睨みあったまま動こうとはしない。ふと昌浩が素朴な疑問を投げかけてきた。
「ところでもっくん。その格好で羽根つきなんかできるの?」
「あぁ?オレを誰だと思ってるんだ?こんな奴、この格好相手で十分だ」
「貴様などには絶対に負けん!!」
昌浩の質問は火に油を注ぐ結果となってしまった。そんな中、無常にも試合開始の鐘が鳴った。
先攻の青龍は勢いよく羽根を飛ばした。それをもっくんはしっぽで器用に掴んだ羽子板で見事に返した。
「くっ……。やるな」
「オレ様をなめるなよ?」
両者とも見事に返しているため、お互いになかなか点数が入らない。
「さあ、始まりました第三試合!!晴明様はこの二人をどうご覧になられますか?」
「ふむ、紅蓮も宵藍も一歩も譲らぬからのぅ〜〜。どうなることやら……」
晴明はやれやれといった顔で二人の試合を見つめている。その隣のも心配した顔で見つめていた。
「お二人とも大丈夫でしょうか?」
「両者ともなかなか点数が入りません。決着はつくのでしょうか?」
彰子の実況のとおり、一向に点数が入る気配がない。いつまでも終わりそうにないと思った晴明は少し考え込むと彰子に告げた。しかも何気に失礼なことまで言っている。
「彰子様、このままでは次の試合がいつになるかわかりません。
あの二人は無視して次に行きましょう」
「えっ?でも……」
「なに、あの二人ならほっといても問題ないでしょう」
笑顔を浮かべて言う晴明に、彰子は曖昧な返事しかできなかった。
「えっと、晴明様の提案により一回戦目・第四試合、六合対勾陳の試合を行いたいと思います。
両者は前へ」
「晴明、どういうことだ?」
「あの二人の試合がいつ終わるかわからんのでな」
「まあ、それもそうだがな……」
突然の提案を不審に思い尋ねた勾陳だったが、晴明の言葉を聞き納得するより他はなかった。それを聞いて六合も依存はないらしい。
「さあ、まもなく試合が始まります!!両者とも準備はいいですか?」
「私の相手が六合、お前だとはな。のためにも容赦はできないぞ?」
「こちらとて同じだ……」
お互いにのためにと一歩も譲らない。肝心のはというと実況席で二人の様子を見守っていた。
「六合、勾陳。お二人とも頑張ってくださいね」
「もちろんだ」
「、必ず勝ってみせる」
が穏やかな笑みを浮かべて声援を送ると、それぞれ今までに見たことのないような笑みを浮かべて答えた。が声援を送ったことにより二人はますます負けなれなくなった。みんなそれも愛しいのためである。
(のためにも頑張らないわけにはいかないな)
(のためにもここで負けるわけにはいかない)
二人が決意を新たにしたとき、試合開始の鐘が鳴った。先攻である勾陳は青龍と同様にすごい速さで羽根を六合に向けて飛ばした。六合はそれを難なく打ち返した。
「なかなかやるな。次はうまくいくかな?」
「その言葉そのまま返す」
もっくん対青龍の試合と同様に白熱した闘いが繰り広げられている。あまりの闘いに彰子は実況することを忘れてほけっ、と見入ってしまっていた。
「すごい――。えっと、晴明様はどちらが勝つと思われますか?」
「そうですな〜。これもまたどうなるかわかりませんな〜〜」
彰子の質問に晴明はニヤニヤ、と何か企むような笑みを浮かべて答えた。
(どちらも様のために引かんだろうな〜〜。さて、六合よ。どうする?)
「ありがとうございました。様はどう思われますか?やはり六合に勝ってもらいたいですか?」
「そうですわね〜〜。
それはもちろん六合に勝っていただきたいのですが、勾陳にも頑張っていただきたいですわ」
彰子の言うことには少し困ったような笑みを浮かべて答えた。
としてはもちろん恋人である六合が勝ってくれたほうが嬉しいのだが、仲の良い勾陳にも頑張ってほしいという気持ちが強いのだ。
先ほどからお互いになかなか点数が入らない。もっくんと青龍のほうを見れば、こちらもまだまだ決着はつきそうにもない。いくら待って終わりそうにないことに苛立った太陰は喚いた。
「いったいいつになったら終わるのよ!!」
「我にそう言われても……」
「俺に言われてもわからないよ」
玄武にそう言われて太陰は昌浩に目線を向けた。見つめられた昌浩は慌てて答えた。
昌浩が晴明に助けを求める視線を送るが、晴明は明後日の方向を見つめて気づかない振りをして笑っている。
(この〜〜くそじじい……!!)
昌浩は心の中で悪態をついた。一方朱雀、天一はというと相変わらず二人の世界に入り浸っている。
そんなこんなで時間は過ぎ――。
気がつけば辺りは薄暗くなり始めていた。
「何だか暗くなってきましたわね」
「そうですね」
ぽつり、と呟いたに彰子も同意する。そんな二人の姫の姿を見て晴明は声をかけた。
「彰子様も様も中へお入りください。このままでお風邪を召されてしまいますぞ?」
「「えっ?」」
「この状態ではいつになったら終わるのかわかりませんしな」
同時に疑問の声を上げる姫君たちを晴明は目元を和ませて見つめた。それでもまだ納得できないはおずおずと尋ねた。
「しかし晴明様。六合たちをこのままにしておいてもよろしいのですか?」
「何、心配は要りませんよ。
それよりも様、あなた様はご自分のお体のことはわかっておいでになりますか?」
「それは……わかっておりますわ」
は思わず顔を俯かせて答えた。さすがに自分の体のことを言われてしまうと反論することはできない。体が弱いことは自身がよくわかっていることだからだ。
はしぶしぶ納得すると彰子とともに部屋の中へと入っていった。二人の後ろ姿を見た昌浩は晴明に尋ねた。
「じい様、彰子と様はどうしたんですか?」
「ん?何、もうじき暗くなるからの。
お風邪を召されては大変だからと部屋に入るように言ったんじゃよ。特に様はお体が弱いからのぅ」
「そうだったんですか。でもじい様、大会はどうなるんですか?」
「それもこれでお開きじゃ。お前達も早く中に入りなさい」
そう言うと晴明は昌浩に背を向けて歩き出した。静かに聴いていた昌浩納得しそうになり慌てて尋ねた。
「じい様、もっくんたちには言わなくていいんですか?」
「あぁ、そのうち気づくじゃろうて」
振り返って答えた晴明は今度こそ自室へと向かって歩いていった。その後ろ姿を見送っていた昌浩に太陰が声をかけた。
「晴明の言う通りよ。部屋へ戻りましょう、昌浩」
「うむ。こうしていてもしかたがない」
「それもそうだね」
太陰に続いて玄武も同じように頷いた。二人の言葉に同意した昌浩はチラリ、と勾陳たちのほうを見た。瞬間勾陳と目が合った。それだけで事態がわかったのか、ぴたり、と動きを止めた。
急に動きを止めた勾陳を不審に思った六合は眉を顰めた。
「どうした?」
「六合、どうやら羽根つき大会はお開きのようだ」
「そうか……」
勾陳と同じ方向に目線を向けた六合は、そこにいるはずの恋人の姿がないことに気づいた。いるのは昌浩と同じ神将である太陰と玄武だけだ。朱雀、天一の二人はいつの間にかどこかに姿を消していた。
おそらくは体の弱いを晴明が気遣い部屋の中に入れたのだろう、と六合は思った。
「六合、この勝負の続きはまた今度――」
勾陳は捨て台詞を残してこの場を後にした。言われた六合はしばらく固まっていたが、深くため息を吐いた。
(まだやるつもりなのか……)
気を取り直すと昌浩たちのもとへと向かった。六合と合流した昌浩たちは彰子とが待つ部屋へと歩き出した。
こうして晴明が突然言い出した『羽根つき大会』は幕を閉じた――。

皆様、新年あけましておめでとうございます。
というわけで、お正月企画作品「新春☆羽根つき大会in安倍家」をお届けしました。
楽しんでいただけましたか?
今回梨には珍しく(?)完全にギャク作品となっています。(えっ?なっていないって?)
ギャクなので、皆壊れております。普段は見られない(?)ような一面まで出してしまっています。
書いている本人としましては、とても楽しんで(妄想しながら)書かせてもらいました。(実話)←ただの危ない人
実はこの作品、時間がない中「間に合わないよ〜!!間に合わない?いや、間に合わせるんだ!!」と言いながら書いておりました。本当に間に合ってよかった。(汗)
↓のおまけもお楽しみくださいね。
駄作ではありますが、皆様にお年玉としてお贈りしたいと思います。
本年度も管理人共々当サイトをよろしくお願いいたします。
2005.1.1 「彩月華」管理人 水原 琳
*前サイトでフリー配布した作品です。現在は配布しておりません。
おまけの話
晴明たちに無視される形となってしまったもっくんと青龍は、未だに白熱したバトルを繰り広げていた。
「青龍、いいかげん負けを認めたらどうだ?」
「ふん、貴様こそ負けを認めたらどうだ?」
「誰がお前なんかに負けるか?」
「その言葉そのまま貴様に返す」
お互いに一歩も譲らないため、一向に決着がつかないのだ。そのため、他の皆が既に部屋の中へ入ってしまったことや『羽根つき大会』が終わってしまっていたことなど、まったく気づかずにいた。
二人の戦いは深夜にまで及んだとか――。
終