ドリーム小説
愛し君
かの女嫌いで有名な吏部侍郎・李絳攸には、ほのかに想いを寄せる大切な幼なじみがいた――。
愛し君
いつものように王の執務室で親友……というには少々御幣はあるが、左羽林軍将軍・藍楸瑛と共に仕事をしていた。
絳攸は国王・劉輝が仕上げている書類を次から次へと確認しながら、間違えた箇所があればすぐに直すように指示を出しつつ――正確には怒鳴りながら――黙々と仕事をこなしていた。
その姿を横目で見ていた楸瑛はぽつり、と呟いた。
「なぜ武官である私がこんなことをしているのだろうね〜〜」
「しかたがないだろう?人手が足りないんだ。口を動かす暇があるなら手を動かせ!!手を!!」
楸瑛の声が聞こえた絳攸は書類から顔を上げると何を言い出すんだ?貴様は!!と言わんばかりに眉を顰めて楸瑛を睨みつけ、また書類に目を通し始めた。
絳攸に睨みつけられた楸瑛はやれやれ、といった様子で怒られないように再び仕事にとりかかった。
休む暇もなく書類を片付けているのだが、見事に高々と積み上げられているいくつもの書類の山は一向に減る様子はない。おかげでそこにいるはずである国王・劉輝の姿が見えない状態だった。
その向こうで机の上に積み上げられた書類をせっせ、と片付けていた劉輝は、終わりの見えない膨大な量に泣きそうになっていた。
朝からずっと一日中執務室に閉じ込められ、鬼……厳しい側近たちに見張られて仕事をしていた劉輝だった。がそれもついに限界を超えて劉輝は喚いた。
「絳攸!!余は、余はもうだめだ」
「……」
書類に目を通していた楸瑛は顔を上げて劉輝に、これ以上言うのは危険だ、という視線を送っていたが、劉輝はそれには気づかずに文句を並べ続けている。
チラリ、と絳攸のほうに目線を向ければ、書類を握り締めたまま何とか怒りを抑えている。が、それも限界にきているようだ。
しかし次の劉輝の言葉に絳攸の忍耐という糸は派手に音を立てて切れてしまった。劉輝が何を言おうとしているのか気づいた楸瑛が止めようとしたのだが、それは既に遅すぎたようだ。
「今日中に終わらせるなんて絶対に無理だ!!あぁ〜〜秀麗に会いたい……」
「……文句を言う暇があったら、手を動かせ!!このバカ王が――!!」
劉輝の情けない言い分に、絳攸は肩をわなわなと震わせて思いっきり、それは腹の底から怒声を上げた。
さすがの楸瑛もこれには驚いた。いつも絳攸を怒らせている楸瑛だが、これ程までに怒る絳攸の姿を見たことはなかった。
(何かあったのかな?)
二人の様子を見ながらそう呑気に考えていた。
絳攸に怒られて、劉輝は犬のように丸くなってびくびく、と怯えていた。絳攸も絳攸で今回ばかりはなかなか怒りが収まらないらしい。
ここ最近機嫌の悪い絳攸の怒りに触れてしまった劉輝は哀れとしか言いようがない。
何故機嫌が悪いかと言うと、極めて個人的なことで機嫌を損ねているのだ。
未だに八つ当たりという名の怒りを劉輝に向けていた絳攸は、コンコン、と扉を叩く音が聞こえ、口を閉じた。さすがに他の者(特に某尚書)にこのことを知られるのはやっかいなことこの上ない。
固まったまま動けない絳攸を見た楸瑛は一つため息を吐き、扉の前まで足を進めた。そしてゆっくりと扉を開けた。
扉を開けたさきにいた人物を目のあたりにして、楸瑛は自然と笑みを浮かべた。
「殿――」
「こんにちは、楸瑛様」
『』と呼ばれた女性はにっこり、という表現がぴったりとくるような笑みを浮かべて、楸瑛を見上げるように立っていた。
絳攸と劉輝は楸瑛の『』という言葉にピクリ、と反応した。
(まさかが来ているのか?)
(が余のもとへ来てくれたのか?)
二人の心情を知ってか知らずか、楸瑛は笑みを浮かべたまま話を進めた。
「どうしたんだい?後宮の女官である君がこんなところまで来るなんて……。
もしかして私に会いにきてくれたのかい?」
「……断じて違います」
「それは残念……」
は楸瑛の自惚れた発言を簡単に、すっぱり、さっぱり、綺麗にピシャ、と笑顔で切り捨てた。
いつもながら綺麗に流されてしまい、楸瑛は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「主上が忘れ物をしていかれたので、それを届けに……」
「忘れ物?」
「えぇ――」
は抱えていた数十枚はある書類の束をわずかに上げて示した。
後宮で女官として働いているが、わざわざ王の執務室に出向いてくるのはそう滅多にない。
疑問に思っていた楸瑛はが抱えていた書類の束を見て、あぁそういうことか、とようやく納得した。
「あの楸瑛様?中に入れてくださいませんか?」
「あぁ、これは失礼いたしました。さぁ、どうぞ」
「ありがとうございます」
に言われてそのまま立ち話をしていることに気づいた楸瑛は、慌ててを部屋の中へと通した。扉を閉めるさいに、物陰からこちらの様子を窺っていた者たちを軽く睨みつけてからパタン、と扉を閉めた。
笑顔で礼を述べて部屋に入ったは、固まった状態でいる絳攸と劉輝の姿を見つけて目を丸くした。
一人は大切な幼馴染み、もう一人は自分の主である劉輝が、奇妙と言えば奇妙な体勢のまま固まっているのだ。驚かないわけがない。
何故固まったままの状態でいるのか不思議に思ったは尋ねた。
「二人共、いったい何をしているの?」
「!!」
「えっ?」
絳攸の横から顔を覗かせた劉輝は、の姿を見つけるとパッ、と顔を明るくさせて声を上げた。犬がご主人様を見つけて、喜んでしっぽを振っているかのような喜び方だ。いや、まさしく犬と言ってもいいだろう。
劉輝は絳攸の横をすべり抜け、勢いよくに抱きついた。正確には抱きしめたと言ったほうがいい。
はいつものことと慣れているのか、多少驚きはしたもののすぐに落ち着きを取り戻していた。いつものこととは思いつつも、はため息を吐かずにはいられなかった。
自分に抱きついたまま離れる様子のない劉輝に、は小さな子供をあやすようにポンポン、と軽く背中を叩いた。
背中を軽く叩かれた劉輝はさらにを強く抱きしめた。
それがおもしろくない男がここに一人――。
そう、何を隠そう絳攸だ。
大切な、それもほのかに思いを寄せている相手が他の男に抱きつかれている。なおかつ抱きつかれている本人もまったく嫌な顔をしていないのだ。
それを目の前で見ていておもしろいわけがない。むしろこの場から去りたいくらいだ。
しかし吏部侍郎という立場上それは許されることではない。絳攸はさらに不機嫌に顔を顰めた。
ここ最近絳攸の機嫌が悪い原因は、実は『』にあるのだ。実際は『』本人というよりも周りの人たちのせいでもあるのだが……。
そんな絳攸の様子に気づくこともなく、劉輝はを抱きしめ続けていた。それに気づいたのは絳攸の隣に立っていた、親友である楸瑛だけであった。
(さすがにこれはちょっとまずい……かな?)
背後に怒りのオーラを漂わせながら絳攸はゆらり、と二人の傍まで近づいていった。尋常ない絳攸の行動にぎょっ、とした楸瑛だったが、あえて止めようとはせずに高みの見物を決めたようだ。
二人の傍まで近づいた絳攸は、未だにを抱きしめ続けている劉輝の肩をがしっ、と掴んだ。そのままいつもより三割り増しの怒りを含んだ声で尋ねた。
「いつまでそうしているつもりだ?」
「こ、こ、絳攸……」
背後から声をかけられた劉輝はビクッ、と体を強張らせた。ぎこちなく首を動かして後ろを見れば、そこには満面の笑みを浮かべている絳攸の顔があった。
笑みを浮かべてはいるが、その目は笑っていない。そればかりか背後には怒りのオーラが漂っている。
劉輝は背中にヒヤリ、と冷たいものを感じて顔を青くさせた。
(このままいけば確実に殺される……)
劉輝がそんなことを考えている間も絳攸は笑みを浮かべたまま劉輝を見下ろしていた。
普段は見せることのない絳攸の姿に劉輝は顔を青くさせて絶句した。その劉輝に追い討ちをかけるように絳攸の声が響いた。
「まだ仕事が残っているだろう?それともそんなに余裕があるのならば、もっと増やそうか?」
「わ、わ、わかった!!今すぐやるからこれ以上増やさないでくれ!!
これ以上増やされたら余は、余は……死んでしまう!!」
「……だったら、さっさと仕事をしろ!!」
「――――!!」
必死に言い訳をする劉輝に絳攸は肩をふるふる、と震わせたかと思うと、いつものように怒りの声を上げた。
絳攸に怒鳴られて劉輝は声にならない叫び声を上げつつ、急いで執務机の上に積み上げられている書類を片付け始めた。
そのあまりにも素早い行動に絳攸は深々とため息を吐いた。
疲れを顔に出した状態で楽しそうに笑みを浮かべているのほうに目線を向けて、尋ねた。
「」
「何?」
劉輝の行動を楽しそうに見ていたは、名を呼ばれて目線を絳攸のほうに向けた。わずかに首を傾げると、きょとん、とした顔で聞き返した。
「もう用は済んだんだろう?」
「えっ?えぇ……」
「戻らなくてもいいのか?」
「そうね〜〜。さすがにそろそろ戻らないとまずいわね」
他人事のようにのんびりと答えるを見て、絳攸は呆れたようなため息を吐いた。
こういうところは昔から変わっていないようだ。
「相変わらずだな」
「あら、そう?」
「そうだ」
苦笑いを浮かべながらぽつり、と呟いた絳攸に、は疑問の声を上げた。だが、それもあっさりと肯定されてしまい、二人は自然と笑みを浮かべて見つめあった。
どこからどう見てもただの知り合いとは思えない雰囲気だ。
それもそのはずだ。二人は幼なじみなのだ。
幼い頃からずっと一緒でよく遊んだ仲だ。
遅くまで遊んで帰ったときなど、帰ってくるのが遅い!!と養い親である黎深に怒られたこともある。それは二人の身を心配してのことなのであるが……。
幼い二人はまた怒られるのが嫌だと、しばらくの間は大人しく邸の中で過ごしたこともあった。
共に過ごした時間が長いせいか、女嫌いになってしまった絳攸はこの幼なじみだけはちゃんと異性としてみることができた。
紅家直系の姫である紅秀麗は女性というよりも弟子としてみている部分が多いので、まだ大丈夫なようだ。
「そろそろ戻るだろう?送って行く――」
「でも……いいの?」
絳攸の申し出は非常にありがたいのだが、忙しいこの時期にそんなことをしてもらっていいものなのか、とは心配になった。
そっ、と楸瑛のほうを覗き見ると、の目線の意味に気づいた楸瑛がわずかに頷いて了承の意思を表した。
「じゃあ、お願いしようかな?」
「わかった。楸瑛、そこのバカ王の見張りをしっかり頼むぞ――!!」
「あぁ、善処するよ」
が控えめにお願いすると、絳攸は穏やかな笑みを浮かべて承諾した。絶対に他の者には見せることはない笑顔だ。
それから絳攸はくるり、と振り返り、バカ王こと劉輝を睨みつけながら見張りを楸瑛に頼んだ。絳攸に睨まれて劉輝は書類を片付ける手を更に早く動かした。
絳攸としては楸瑛にこんなことを頼むのは不本意なのだが、状況が状況なだけにしかたがない。
何となく絳攸が言いたいことがわかった楸瑛は人知れずため息を吐いた。
(そんな心配は必要ないと思うけどね……)
チラリ、と横目で劉輝を見れば一心不乱に書類を片付けていっている。
楸瑛に後のことを頼み、を送って行くために部屋を出るために扉を開いた。が、扉を開くと同時に何かが部屋の中に傾れ込んできた。
よく見てみれば、今頃溜まりに溜まった書類を片付けているであろう官吏たちだった。絳攸はまさかと思い、扉の外へ目線を向けた。
注意深く見ていると、柱の影や植え込みの中などに隠れて数人の管理たちがこちらの様子を窺っている。
絳攸の行動を不審に思ったは、小さな子供のようにひょこっ、と後ろから顔を覗かせた。
が顔を見せたことで床に倒れこんだままであった官吏たちが何やらざわざわと騒ぎ始めた。
「殿だ」
「本当だ。殿だ」
「相変わらずお美しい……」
などと口々に呟いている。中にはに見惚れている者までいる。
そう、何を隠そうここにいる官吏たちは、の姿を一目だけでも見たいがために待ち伏せをしていたのだ。
は後宮の女官を務めていることもあって、頭がよく美人である。そのうえ非常にさっぱりとした正確のために男性だけでなく、女性にも人気が高いのだ。
後宮の女官であるは余程のことがない限り、後宮から外へ出ることはない。いくら一目だけでも姿を見たいと言っても、後宮は王以外の男性は入ることができない場所だ。
例えそれが幼なじみだとしてもだ。
会う手段があるとすれば、直接本人を呼び出してもらうより他がないのだ。
決してと親しいわけではない官吏たちにとっては、こういう機会でもないとの姿を見ることはできないというわけだ。
今日が王の執務室に来る、という情報をどこからか入手してきた一人の官吏が、どうやら他の官吏たちに情報を流したことが原因のようだ。
おかげで今のような状況になってしまっている。
官吏たちのこの行動に絳攸は、自分の中で何かがブチッ、と切れる音を聞いた。
一方、先ほどから黙り込んだままの絳攸を不思議に思っていた官吏たちは次の瞬間、一斉顔を青くさせた。
黙りこんだまま小刻みに肩をふるふる、と震わしている絳攸を不審に思ったが声をかけた。
「……絳攸?どうかした……」
しかしの声を絳攸自身の声によってかき消されてしまった。
「……貴様ら、さっさと持ち場に戻らんか――!!」
絳攸のあまりの剣幕に騒いでいた官吏たちはピタリ、と口を閉じた。そして次々と慌てふためきながら、それぞれの仕事場へと一目散に逃げていった。
書類を片付けていた劉輝もビクリ、と身を強張らせるほどの怒声が辺り一面に響いていた。
怒声を上げた絳攸は肩で息をしながら、官吏たちの素早い行動に内心呆れていた。
久しぶりに絳攸の怒声を聞いて多少驚いただったが、未だに肩で息をしている絳攸が心配になり声をかけた。
「絳攸、大丈夫?」
「あぁ、何とかな……」
「よかった」
絳攸の答えにほっ、としたは微妙を浮かべた。
そのの様子を真正面から見つめていた絳攸は不謹慎にも可愛い、と思っていた。
しばしに見惚れていた絳攸だったが、に声をかけられてハッ、と我に返り、珍しく慌てた。
「絳攸?」
「――!!いや、何でもない」
ずっと自分を凝視したまま固まっている絳攸を心配して声をかけただったが、我に返った絳攸にすぐにはぐらかされてしまった。
何だか納得のいかないなのだが、そこまで深く考える必要もないかと、あっさり考えることを諦めた。
「じゃあ、行きましょうか?」
「あぁ、そうだな」
「主上、頑張ってくださいね。楸瑛様も」
から応援の言葉を貰った劉輝はわずかに笑みを見せると、絳攸の目を気にして再び書類を片付けにかかった。
の笑顔に答えるように楸瑛も笑みを浮かべて軽く手を振った。
それを確認するとはパタン、と扉を閉めて、自分の仕事場である後宮に帰って行った。もちろん後宮まで送ってくれると絳攸と共に――。
部屋を出ていく二人を笑顔で手を振りながら見送っていた楸瑛は、パタン、と扉が閉まると同時にため息を一つ吐いた。
(後で迎えに行ったほうがよさそうだね――)
を後宮まで送り届ける間、絳攸はに告白するかどうか迷っていた。以前も何度か告白しようとしていたのだが、その度に途中で諦めてしまっていたのだ。
しかしこのままではいつか他の誰かにを盗られてしまう――。
そうなる前に……。
絳攸が一大決心を固めたとき、既に後宮へと続く扉の前まで来ていた。先を歩いていたは立ち止まり振り返った。
「ここまで送ってくれてありがとう。絳攸も大変だとは思うけど、お仕事頑張ってね」
「あぁ……」
「それじゃあ……」
お礼を述べたはくるり、と絳攸に背を向けて扉に手をかけ、開けようとした。が、絳攸に名を呼ばれてはピタリ、と動きを止めた。
「――」
ゆっくりと振り返った先には、いつになく真剣は目をした絳攸の姿があった。
はわずかに緊張しながら、静かに次の言葉を待った。
絳攸はを引き止めたものの、いざ本人を目の前にしていると告白するのが躊躇われた。
しかしここで何も言わなければ、を引き止めた意味がない。それに不審に思われるのは必至だ。
絳攸は覚悟を決めた――。
「、俺は……」
そのとき、は絳攸の後方に見慣れた人物の姿を発見した。その人物はこちらに向かって歩いてきている。
に笑顔を向けたまま、ゆっくりとした足取りで絳攸に近づいていた。絳攸とある程度離れた位置で立ち止まり、声をかけた。
「絳攸、迎えに来たよ」
に告白しようと決心した矢先、背後から声をかけられて固まった。絳攸のよく知っている、出来れば今最も会いたくない人物に声をかけられたのだ。
絳攸はゆっくりと振り返った。
「楸瑛……」
「やあ、絳攸――」
絳攸の予想通り、そこには眩しいくらいに笑みを浮かべて楸瑛が立っていた。
「楸瑛……何しに来た」
「だから絳攸、君を迎えに」
「……」
語尾にハートマークは付きそうな勢いで言われ、絳攸は不機嫌に顔を歪めた。
本来王の執務室で劉輝の見張りをしているはずの楸瑛が何故ここにいるのか気になったは尋ねた。
「楸瑛様、主上の見張りはよろしいのですか?」
「んっ?あぁ、それなら心配はないよ?殿。
書類を片付け終えて、バテている頃だろうからね〜〜」
呑気に話す楸瑛に絳攸が即座に反応した。
「何?もう終わったのか?」
「だからこうして君を迎えに来たんだよ、絳攸」
「……」
あっさりといわれて絳攸は何も言えなかった。密かに心の中で毒づいた。
何やら一人の世界へ入り込んでしまった絳攸を見ながら、はふとあることに気づき尋ねた。
「ところで絳攸、さっき何を言おうとしたの?」
「あぁ、それは……」
続きを言おうとした絳攸はすぐ隣に楸瑛がいることにハッ、と気づき、口を閉じた。
「絳攸?」
「いや、何でもない」
「えっ?でも……」
「また今度話す」
「……わかったわ」
話の続きが気になってしかたがなかったが、こうなると何を言っても話してくれないことをはわかっているため渋々諦めた。
が諦めてくれたことに絳攸はそっ、と胸をなで下ろした。
「俺はそろそろ仕事に戻る。それじゃあな……」
「あぁ、絳攸!!それじゃあ私もこれで失礼するよ、殿」
「えっ?えぇ……」
先に歩き出してしまった絳攸の後を楸瑛は慌てて追いかけていった。
二人の後ろ姿を見送ったはそっ、とため息を吐いた。
(絳攸……今度こそちゃんと言ってくれるわよね?)
二人が恋人同士になるのは……もう少し先のお話――。
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この作品はサイト1万ヒット記念に書かせていただいた、水城深闇様リクエストの李絳攸夢です。
深闇様、リクエスト通りになっているでしょうか?
今回初挑戦(またか)の絳攸夢。かなりどんな内容の話にするか迷いました。
おかげで甘くもなければ、ほのぼのでもない話になってしまいました。(汗)
えっと、実はヒロインさんは絳攸が告白してきてくれるのを待っているのです。(爆弾発言)
二人が恋人同士になれるかどうかは絳攸にかかっています。絳攸、頑張れ!!
ではこんな駄作ではございますが、サイト1万ヒットを記念してお贈りいたします。
あっ、もちろん返品してくださってもかまいませんので。
2005.2.9 水原 琳
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