ドリーム小説






寒い夜は……


ひらり、ひらりと舞う雪――。

息は白く染まり、指先は凍る。

そんな、寒い夜は……。










      寒い夜は……










「……それで、いつまでいるつもりだ?」

自室で資料の整理をしていた鳳珠は、その手を止めて美麗な顔を引きつらせて苦々しく吐き出した。
資料の整理をしようと自室に入った直後、非常識な悪友……もとい友人が訪ねてきたのだ。
いや、訪ねてきたというには少々語弊があるだろう。

本人の承諾を得ないまま、自分が溺愛してやまない兄家族のことを延々と途切れることなく話し続けている。
まともに聞いていては身がもたない。それは長年の付き合いから理解している。
そのため初めから資料を整理する手を止めずにただ聞き流している。
時折、相槌を入れて適当に合わせることは忘れない。

しかし……。

それが一時間も続けば嫌になってくる。
当の本人はと言うと……。

「話が終わるまでに決まっているだろう?それであの時の秀麗ときたら……」

要するに終わるまでも帰らない、ということだ。いや、終わるかどうかそれすらも怪しい……。
さらに顔を引きつらせた鳳珠を気にも留めず、嬉々として溺愛する姪の話をする黎深であった。






それから時は過ぎ……鳳珠の我慢も限界にきた頃――。
室の外から邪魔にならぬようにとの配慮なのか、控えめな声が聞こえてきた。
黎深の話にうんざりしていた鳳珠がいち早く気づき、室の外にいる者の名を呼んだ。

「……か。どうした?」
「あの、お茶をお持ちしたのですが……」

それを聞いた鳳珠はおそらくの両手が塞がっていて困っている姿が容易に浮かび、そっ、と扉を開けてやった。

一方もお茶を運んできたものの、両手が塞がっていたためどうしたらよいのかと困っていたところだった。
そっ、と扉が開かれたことに安堵しつつ、室に足を踏み入れた。

扉を開けてくれたであろう鳳珠に顔を向けて笑みを浮かべ、一言礼を述べてから目線を正面に向ける。と同時に目を丸くした。

「ありがとうございます、鳳珠様。……黎……深様?」
、お邪魔しているよ」
「まったくだ……」

の姿に気づいた黎深は、先ほど兄家族のことを話しているときの締まりの表情とは違い、普段のきりりとした笑みを浮かべていた。
最もこれが普通と言えるのかどうか定かではないが……。

自然と出た黎深の言葉にその美麗な顔を顰めて鳳珠は即切り返した。
二人の会話には慣れているであったが、ふと自分の手元を見てはっ、とした。

「……あっ!!」
「どうした?

急に声を上げたを不思議に思い、二人は不毛な言い合いをピタリ、と止めた。

「黎深様の分のお茶を用意してませんでしたわ。すぐに用意を……」
「その必要はない」

いたします、という言葉は鳳珠によって遮られてしまった。慌てて部屋を出て行こうとしたであったが、その言葉に足を止めて振り返った。

「えっ?ですが……」
「……本当だよ、。そろそろ失礼させてもらうつもりだったからね」

少々困ったように首を傾げると、どこか苛立たしげに眉間に皴を寄せている鳳珠……そんな二人を見て黎深はニヤリ、と笑みを浮かべた。
立ち上がった拍子に椅子がカタン、と小さく音をたてる。
そのままの横を通り過ぎ、扉の前まで来ると足を止めて後ろを振り返った。

「それじゃあまた来るよ、鳳珠」
「二度と来るな――」

苦々しく吐き出された答えに満足したのか、黎深は微笑を浮かべて室を後にした。
どうせ来るなと言っても来るのが黎深である。
また気まぐれに訪れるであろうことが予想され、深くため息を吐いた。

「あの、鳳珠様。お茶はどうされますか?」
「あぁ、貰おう……」

はい、と笑みを浮かべて答え、運んできた茶器を机案の上に置いた。湯気を立たせながら湯のみに注ぎ、直接手渡した。

「どうぞ……」
「ありがとう……」

微笑を浮かべて受け取ろうとしたが、その際に触れたの手が異様に冷たいことに気づいて眉を顰めた。
鳳珠が受け取ったことを確認してから手を離そうとしただったが、包み込まれるように手を握られてしまっていた。
無言のまましばらくそうしていると冷えた手にじんわりと徐々に温かさが戻ってくるのがわかった。
なかなか離してくれそうにない様子におずおずと尋ねた。

「あの……鳳珠様?手を……」
「冷たいな――」
「えっ?」

手に目線を向けたままぽつり、と鳳珠は呟いた。

「ちらほらと雪が舞っておりましたから……」
「そうか、どうりで……」

微笑を浮かべて答えれば、どこか納得したような顔で手を離してお茶を口にした。

「今宵は冷えますから、どうぞ早めにお休み下さい」
「そうだな……」

お茶を飲み干して湯飲みを机案の上にコトン、と音を立てて置いた。そのままに目線を合わせたかと思うと、おもむろにその手を軽く引っ張った。
もちろん引っ張られるとは思っていなかったは、そのまま鳳珠の胸に倒れこんだ。

「えっ?あの、鳳珠様?……って、きゃっ!!」

自分のほうに倒れこんできたをそのまま流れるように抱きかかえた。所謂お姫様だっこという状態だ。
突然自分と目線が同じ高さになったことに軽く困惑しつつ、頬を薄く染めて鳳珠を見つめた。
微笑を浮かべるとそのまま奥にある臥室へと歩き出した。それに慌てたは声を上げた。

「ほ、鳳珠様!!」
「どうした?」

足を止めて顔を覗き込んできた鳳珠に安堵しつつ、恐々と尋ねた。

「何故私は運ばれているのでしょうか?」
「今宵はよく冷えるのだろう?」

たっぷりと一呼吸置いて頷く。それを見た鳳珠は再び歩き出した。

腕の中でがあたふたとしている間に臥室の扉は開かれた。足を踏み入れた鳳珠はそのまま寝台に近づき、ゆっくりとを下ろした。
寝台の上に下ろされたことでさらに困惑しているを尻目に、上着を脱いでその辺りに置いた。
自分が近づいてきたことに気づいたが何かを言いかけたが、気に止めることなくその口を塞いだ。

「鳳珠様、ど……ん……っ」

丁寧に優しく、壊れ物を扱うかのように貪る。
なかなか放してくれない鳳珠からは身を捩って何とか逃れようとした。が、それは逆効果と言わんばかりに強く貪られる。
思う存分堪能した後、名残惜しそうにゆっくりと顔を離した。
の顔を覗き込めば、瞳は潤み、頬は赤く染まっている。その様子に満足したのか笑みを浮かべて額に口付けをして自分も寝台に潜り込んだ。
未だにそのままの状態であるの腕を引き、自分の腕の中に閉じ込めた。身を強張らせているに愛しさを感じつつ眠りについた。
静かに寝息を立て始めた鳳珠に気づいたは、そっ、と顔を覗き込んだ。

(たまには……いいですよね?)

微笑を浮かべると、鳳珠に寄り添い瞼を閉じた。







寒い夜は……。


大切な人の傍に――。




















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彩雲国物語、祝☆アニメ化記念の鳳珠夢です。
記念なのにお相手は鳳珠様です。えぇ、私の趣味です。(笑)

えっと、何故こういった話の内容になったかと言いますと……。
ただ鳳珠様に添い寝をしてもらいたかっただけです。(爆)
こう寒い日が続いたり、大雪が降ったりしてましたので、温もりが欲しかったのです。
でも実際にされたら眠るどころじゃありませんけどね?(苦笑)

何気に最後、微妙に裏のような気もしますが……。
うん、まだこのぐらいなら問題ないですよね?
まぁ、大丈夫だろうということで。(マテ)

ヒロイン設定は特に決めておりませんので、お好きにどうぞ。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

2006.1.1(1.24 掲載)   水原 琳

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