ドリーム小説






ささめごと


私がいつもお前という存在に助けられているのか――。
どんなにお前という存在に癒されているのか――。
お前はまったく知らないのだろうな……。










      ささめごと










戸部での仕事を終えて帰宅した鳳珠はすぐに自室へと向かった。
この時期の朝廷はそれほど忙しいわけではないのだが、万年人手不足である戸部は今日もいつもと変わらずに忙しかった。それでも今日は邸に持ち帰ってまで終わらせる仕事がなかったのは不幸中の幸いである。
とは言え、疲労の色は隠せない。
いくら顔を仮面で隠していても、周囲を漂う雰囲気で疲れているであろうことがすぐにわかってしまう。
自分でもわかっていることなのだが、今さら取り繕う気にもなれなかった。
自室の前で立ち止まると、一つため息を吐いた。それから室の中へと足を踏み入れた。
足を一歩踏み入れたと同時に明るい声が響いてきた。

「お帰りなさい、鳳珠様――」
「……ただいま」

鳳珠を見上げるように満面の笑みを浮かべて目の前に佇む少女。一瞬驚いたものの、答えを返すことができた。
先ほどまで漂っていた疲労の雰囲気がわずかに和らいだ。だが、完全に疲れたが取れたというわけではない。

それに気づいたのか少女――は心配そうに尋ねた。

「鳳珠様?お疲れでございますか?」
「あぁ……」

そのままの横を通り過ぎ、仮面を外して机案の上に置いた。カタン、と音をさせて仮面を置いた時、机案の上に広げられている書物があることに気づいた。

――」
「あっ、はい」

ゆっくりと振り向いて尋ねた。

「勉強していたのか?」
「はい、ですが難しくて……」

苦笑いを浮かべて答えるを見てから、再び書物に目線を向けた。開かれている頁に一通り目を通した後、ぽつり、と呟いた。

「なるほどな……」
「あの、鳳珠様?」

一人で考え込んでいる様子に首を傾げた。

「それで」
「……えっ?」
「どこがわからないんだ?」

突然声をかけられて、わずかに反応が遅れた。

「でも鳳珠様はお疲れなのでは……」
「疲れてはいるが、教えられないほど疲れているわけではない」

気遣うつもりで言ったのだが、逆にきっぱりと否定されてしまった。疲れていることに違いはないようだが……。

それでも戸惑っていると、こちらに来るようにと目線で促された。さすがにそこまでされては教えてもらうより他はなかった。
が傍まで来てから再び尋ねた。

「それで、どこがわからないんだ?」
「ここのところなのですが……」

指で示された箇所を見てみれば、確かにでは少しばかり難しいことが書いてあった。一人で理解しようとしても無理だろう。
どこまで理解しているのか鳳珠に判断できなかったため、初めから丁寧に説明していくことにした。
説明しながら、ここまでは理解できたか?と確認をしながら進めていった。鳳珠の説明がわかりやすかったのか、所々頷きながら聞いている。
最後まで一通り説明が済んだ後、はやっと理解できたらしく嬉しそうに微笑んでいた。

「……ということだ?理解できたか?」
「……はい、ありがとうございます」

今聞いた内容を再び書物の内容と比べながら、あぁ〜だからこれがこうなるのね?と再度確認をしていた。
その様子を隣で見ていた鳳珠は無意識のうちに顔を緩ませた。それは本当に限られて人たちしか見ることのできない、穏やかな笑みを浮かべていた。
しかもふと気づけば、今まで漂っていた疲労の雰囲気が完全になくなっている。


鳳珠は内心苦笑いを浮かべた。
目の前いる少女は自分にとっては必要不可欠の存在なのだと改めて思い知らされる。







、やはりお前にはいつも助けられてばかりいるな……。

お前という存在がどんなときも私を癒してくれる――。

だから、ずっと私の傍にいて欲しい――。






想いを伝えることは簡単だ。

だが……。

今はまだこのままの関係でいるのも、悪くはない――。




















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鳳珠様の独白(?)というのか、鳳珠様視点での話が書きたいな〜〜と思いましてできたのがこの作品でございます。
いや、何故かふと浮かんだネタがこれでしたので……。特に深い意味はありません。(汗)
ただここまであの鳳珠様に想われていたら嬉しいだろうな〜〜と。
ちなみに題名の「ささめごと」とは、内緒話という意味だそうです。
ようするにヒロインには内緒の話ですよ〜って意味でつけてみました。
ヒロイン設定は……特にこれと言って決めてませんので、お好きなようにご想像ください。


こんな駄作ではございますが、誕生日祝いとして捧げます。
気に入らなかったら処分してくださってもかまいませんので。

2005.6.1   水原 琳

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