ドリーム小説
魅惑の舞姫 前編
その姿は花が咲き誇る如く――。
その舞は蝶が舞う如く――。
プラント、地球、オーブの間で人々に癒しを与え、魅了してやまない者。
『蒼き姫』と謳われる舞姫がいた――。
魅惑の舞姫 前編
プラント、ザフト軍基地――。
その軍事施設の一角に特設ステージが建設されていた。
ザフトの兵たちは、何があるのだろうか、と興味深げにステージを見ていた。それもしかたがないことである。
華美にならないまでに飾られた舞台。その舞台を照らす照明はステージを囲むようにして取り付けられていた。
舞台の後方には巨大スクリーンもしっかりと用意されている。
これはもしかすると、このプラントの歌姫であるラクス・クラインがコンサートを行うのではないか……。
そんな期待を膨らませていた兵たちであったが、最近流れてきた噂は少々違うものらしい。
その噂というのはあの有名な『蒼き姫』と呼ばれる舞姫があのステージで舞を披露するというものだ。
男女を問わず人気の高い舞姫。
『蒼き姫』の公演のチケットはその人気の高さから即完売。おかげで舞姫の舞を見る機会がなかなかなかった。
もし噂が本当なのだとしたら……兵たちにとって嬉しいことだ。
最近は数日後に控えた新造艦・ミネルバの推進式の準備で忙しい。そんな中、束の間の休息を取れる上に、あの舞姫の舞を目にすることができる。
気を引き締めるとそれぞれ作業へと戻って行った。人間、先の楽しみがあると頑張れるものだ。
あるホテルの一室――。
若い男女がなにやら深刻な顔をして黙り込んでいた。女性はベットに腰を下ろし、男性は向かいの壁に背を預けている。
女性は足の上で軽く組んでいた拳に力を入れて、吐き出すように呟いた。
「私は……あいつをここに来させたくなかった……」
「それは俺も同じだ、カガリ……」
「アスラン!!だったら!!」
「わかっている!!だが、あんな顔をされたら……何も言えないだろう?」
男性―アスラン―に勢いよく詰め寄ったカガリだったが、アスランの苦々しく吐き出された言葉に口を閉ざすよりほかはなかった。
無言のまま再び腰を下ろしてアスランに聞かせているのか、独り言なのか判断のつかない声で呟いた。
「そもそも議長がいけないんだ……」
三日前――。
オーブ出身で現在もオーブを拠点に活動を続けている『蒼き姫』の名で人気の高い舞姫、・のもとに通信が入った。
その相手というのが少々やっかいな相手であった。
現プラントの指導者で最高評議会議長、ギルバート・デュランダル本人から直接連絡があったのだ。
その内容というのが……。
『今度行われる推進式の前に、準備に追われる兵たちのために舞を披露してほしい』
というものであった。
はすぐさま承諾の意思を議長に伝え、三日後にプラントの資源衛星・アーモリーワンに行くこととなった。
そのことを友人で、オーブの代表首長を務めているカガリ・ユラ・アスハに喜んで伝えた。が、報告を受けたカガリは即反対の姿勢を見せた。
「三日後にアーモリーワンに行くことになったの。
議長自ら依頼があって、私に舞を舞ってほしいそうなの」
「……だめだ!!」
「えっ?」
「1人で行くのは危険すぎる。止めるんだ」
すぐ傍で共に聞いていた護衛役であるアレックス・ディノ……いや、アスラン・ザラも驚きの表情を浮かべた。
カガリとはまた別の意味で反対の意を述べた。
「で、でももう依頼は受けてしまったのよ?」
「今すぐ断れ!!」
「、君なら大丈夫だ」
二人揃って反対する意味がにはまったくわからなかった。
舞姫として、舞を舞って欲しいと言われたからには、例えどんな場所でも訪ねていく。そして舞を披露する――。
これはが舞姫となったときに決めたものだ。それを覆すことはできない。
「二人が心配してくれるのは嬉しいけれど……やっぱり私は行きたい。
私の舞を楽しみにしていてくれる人がいるのですもの」
「……」
「だが!!」
「だから……行かせてください」
カガリもアスランもが思っていることとは別の意味で心配しているのだが、当の本人はまったく気づく様子もない。
(あんなに可愛いをあの獣の群れの中に放り込むことなど!!
私にはできない……いや、させてはならない。だが……あんな顔をされたら……)
(を他の奴に見せる?そんなことできるものか。
ただでさえ敵は多いというのに……これ以上増やしてわけにはいかない。
だが……そんな顔は反則だろう?)
「……わかった」
「カガリ、本当に!!アスランも?」
「あぁ……」
「本当だ。だが私も一緒に行くからな」
「「えっ?」」
アスランとのことが見事に重なった。
いくら一緒に行く、と言っても代表首長であるカガリがそう簡単に国を空けてよいものではない。それも私用で実行しようとしている。
まだ公務ならばいくらでも理由は立つであろう。しかし今回は公務とはまったく関係がない。
「カガリ、いくら何でもそれは!!」
「私が行ってはいけないのか?アスラン」
「そういう問題じゃないだろう!!国は?執務はどうするつもりだ?」
「それは問題ない。どうせ近々私もアーモリーワンに行くつもりだったからな」
「はっ?聞いてないぞ」
「それはそうだろう。今言ったからな」
「カガリ……」
疑問の言葉をことごとく退けるカガリに、アスランを深くため息を吐いた。
二人の様子を傍で見守っていたはどうしたらよいのか、と二人を交互に見つめていた。
「議長との会談はもう少し先のことだが、少しぐらい予定を早めも問題ないだろう。
少しあちらの様子を見てくることもできるしな」
「わかった……」
「ということだ、。私も一緒に行くからな」
「俺も一緒に行くぞ」
「二人とも、ありがとうございます」
笑顔で感謝を述べるに思わず二人の頬は緩んだ。
表向きは笑みを浮かべている二人であったが、内心は……そうでもなかった。
(アスラン、何故お前までくる必要がある。には私がいれば十分だ)
(俺は護衛だぞ?護衛をつれない代表がいるか?普通)
(……っ。護衛は必要ない。を守るのは私だからな)
(いや、俺が守る。どんなことをしても守ってみせる)
(お前……仮にも私の護衛だろう?)
(あぁ……それとこれとは関係ない)
(……)
こうして三人はアーモリーワンへ向かうこととなった。
そんなことがあり、今に至る――。
「私は今でも反対だ」
「それは俺も変わらない……。だが、が望んだことだ。俺たちが信じてやらなくてどうする?」
「わかっている。は私が守る」
重い空気が漂う部屋に控えめにドアをノックする音がした。
咄嗟に声を出そうとしたカガリをアスランが手で止めた。部屋の外にいる人物に鋭い視線を向けた。
ドアを見つめたまま動かないアスランに、わずかに緊張が走る。が、それもドアを開けて入ってきた人物を見て解けた。
「カガリ、アスラン!!」
「「!?」」
現れたのが今二人の話題となっていた相手だったので、拍子抜けしてしまった。
「、どうしたんだ?」
「今議長から連絡があって、明日舞うことになったの」
「明日!?ずいぶんの急な話だな」
「アスランもそう思うでしょう?でも早いほうがいいみたい」
「他には何か言ってなかったか?」
「あっ、それでね?代表も是非って席を用意してくれるって……」
「そうか。じゃあ行かないわけにはいかないな」
どこか嬉しそうに話すの姿に、自然と笑みがこぼれる。その余韻に浸っていると身近な敵であるアスランがに手を伸ばした。
「よかったな、」
「うん。アスランもちゃんと私の舞見てね」
「あぁ、見るよ」
自分だけに向けられる笑顔にアスラン顔はだらしなく緩む。流れのままにに手を伸ばそうとしたが、それもあえなく阻止されてしまった。
「……っ!!」
「アスラン?どうかしたの?」
「い、いや。何でもないよ」
足の痛みを堪えつつ何とか笑みを浮かべて誤魔化した。
横目でカガリの様子を窺えば、本人は何もなかったかのような涼しい顔でと話していた。

この作品はお世話になりましたお礼+サイト3万Hit記念に書かせていただきました。
瀬尾彩音様リクエストのガンダムSEED DESTINY夢です。
彩音様、リクエスト通りになっているでしょうか?
今回初挑戦(またなのか!!)のガンダムSEED DESTINY夢。
一応逆ハ―……のつもりだったのですが、なぜかカガリとアスランでヒロイン争奪戦となっております。
う〜ん、予定ではほどよく出てもらうつもりだったのに……。
おかげで他のキャラがまだ出てきておりません。(泣)す、すみません。
話を考えていたらどうやら長くなりそうなので、前後編と分けさせていただきました。
後編はなるべく近いうちにお届けできるようにいたしますので、今しばらくお待ちください。
私の力不足のせいです。ごめんなさい。
後編は(たぶん)ギャグになります。
では後編、早くお届けできるように頑張ります。
もし気に入られなかったら書き直しますので、お知らせください。
2005.11.8 水原 琳