ドリーム小説
優しい瞳 4 訪問
いつも二人でいるのが当たり前に見えた――。
言葉には出さないけれど、心が通じあっていることがわかる――。
いつか自分もそんな風になれたら……。
4 訪問 〜噂の恋人の姿は――〜
まだまだ暑い日が続いている中――。
式部卿宮家のの部屋はいつもとは違い、にぎやかな笑い声に包まれていた。
部屋の中にはこの部屋の主である、その恋人である六合、遊びに来ていた昌浩ともっくん、そしてなぜか太陰と玄武の姿もあった。
なにやら昌浩ともっくんを中心に話が弾んでいる。その様子を穏やかな笑みを浮かべながら見ているを、隣に座る六合は静かに見つめていた。
六合はそっ、とため息を吐いた。本来ならばいつものようにと二人で過ごす予定だったはずなのだが……、なぜかこういうことになっている。
思い返してみれば原因はアレしかない。六合はさらに深いため息を吐いた。
時を遡ること一時間ほど前――。
いつものようにのもとを訪ねるために安倍邸を出ようとしたところ、丁度陰陽寮での仕事を終えて帰ってきた昌浩ともっくんにばったり出くわした。
「あっ、六合」
「どこかに出かけるのか?」
当たり前と言えば当たり前の言葉に六合は一瞬、わずかに顔を曇らせた。
ほんの一瞬のことだったので昌浩は気づかなかったが、もっくんは見逃さなかった。ニヤリ、と笑みを浮かべて楽しそうに尋ねた。
「あ〜。これからのところに行くのか〜」
尋ねるというより断定に近い。
その横で昌浩は六合が返答をしないのは肯定を意味しているんだ、と勝手に解釈して素直に頷いた。
「へ〜、そうなんだ」
二人の様子を無表情に見つめていた六合は考え込んだ。
よりにもよってこの二人に見つかってしまうとは……。
このままこの場を去れば、後で他のものに何と言うかわからない……。
(さて、どうしたものか……)
もっくんは何かを思いついたのか、六合を見上げてニヤリ、と意地の悪い笑みを浮かべた。
六合は背中にヒヤリ、と冷たいものを感じた。素直に頷いていた昌浩にもっくんは唐突に提案した。
「なぁ、昌浩。オレたちものところへ行こうぜ」
「へっ?なんで?」
「前に訪ねたとき、また遊びに来てくれってが言ってたじゃないか」
「それはそうだけど、何も今日じゃなくてもいいんじゃ……」
もっくんの提案に昌浩は難色示す。
「早いほうがいいだろう。それに……おもしろそうだしな」
チラリ、と六合の顔を窺うと、微かに顔を歪ませている。
昌浩は少し考え込むと、それもそうだね、とあっさり頷いた。
「なっ、そうだろう?」
「とりあえず、彰子に顔を見せてくるよ。もっくんはここで待ってて」
「わかった」
昌浩は急いで邸の中に入って行った。
残された二人は何も話さずに立ち尽くした。六合はいつもの無表情の中に怒りの色を浮かばせている。
もっくんはもっくんで気づいているのだが、敢えて知らない振りをした。
しばらくすると昌浩が戻ってきた。なぜかその後ろに太陰と玄武の姿も見える。
どうして昌浩だけでなく、太陰と玄武の二人までいるのかもっくんは昌浩に尋ねた。
「昌浩、どういうことだ?」
「実は……」
昌浩が自室に行くと、彰子と丁度話し相手になっていた太陰と玄武がいた。
昌浩を笑顔で迎えた彰子に挨拶を済ませると、これからに会いに行ってくることを説明した。
それを横で聞いていた太陰が、私も行くわ、と言い出した。
玄武も太陰を止めるどころか、我もその姫とやらに会ってみたい、と言ってきた。
今さら二人増えたところでたいして変わりはないし、ここで連れて行かなければ太陰が怒るのは目に見えている。
彰子に、行ってくる、と一言告げて部屋を後にした。後ろから彰子が、帰ってきたから私にも様のことを聞かせてね、と声をかけてきた。
昌浩はそのまま手を振って了解の合図を送った。
「……ということなんだよ」
「ふ〜ん。まっ、いいんじゃないか?」
後ろに控えている二人を興味なさそうに見つめながら、一応賛成の声を上げた。
その声にパッ、と顔を明るくさせた太陰が六合を見上げて再度確認した。
「本当に行ってもいいの?」
「あぁ……」
昌浩からに会いに行ってくることは聞いていたが、まさか六合まで一緒にいるとは思わなかったのだ。
そのため六合にも一応確認をとっておいたほうがいいだろうと判断し尋ねた。
本当のところは連れて行きたくはないのだが、さらに人数が増えたことで事態がどうなることでもない、と諦めに似た心境で六合は承諾した。
「そうと決まれば行くわよ〜」
いつの間にか仕切っている太陰が声を上げて皆を促した。
先頭に立って歩き出した太陰の後についてぞろぞろ、と歩いて行く。少し遅れて六合が後を追った。
そして今に到る――。
六合はそっ、と嘆息した。昌浩たちの会話を楽しそうに聞いていたは、先ほどから無言のままでいる六合をふっ、と見つめた。
口数が少ない六合はあまり話すことはないが、今日のように一言も話そうとはしないのは珍しい。
しかしにはどうしてなのかまったく理由がわからない。
「六合、どうしたのですか?」
「なぜ、そう思う……」
心配した顔で見つめてくるに六合はわずかに驚きの表情を浮かべ、目線を移しながら抑揚に欠けた声で尋ね返した。
聞き返されたは思わずに目を見張り、少し困ったような悲しいような表情で俯きながら答えた。
「……だって、ここに来てから一言は話してはくれないんですもの……」
「それは……」
だんだん語尾が小さくなっていく。六合は言葉を詰まらせた。確かにここに来てから一言もと会話をしていない。
普段から多く話すほうではないが、まったく話さないというのは今回が初めてである。
「すまなかった……」
「謝ってほしいわけではないの。気分がよくないのならそう言ってくだされば……」
謝ることしか思いつかなかった六合は、の言葉に内心驚いた。
確かに気分はよくないといえばそうなのだが、そのことをに伝えれば理由まで聞いてくるだろう。その場合こちらが返答に困る。
考えた末、敢えてに言わなかった。
「そうわけではない……」
「そう……」
それっきり黙りこんでしまっている六合に納得できないのだが、これ以上聞いても教えてはくれないだろう思った。
いったいどうしたのだろう?思い返してみれば今日ここに来たときからそうだったような気がする――。
はいつものように自室で書物を読み耽っていた。
庭はいつの間にか茜色に染められようとしていた。
「そろそろ彩Wが来る頃ですわね」
読んでいた書物をパタン、と閉じて片付けようとしたとき、御簾の外からカタン、と音をさせて付きの女房である卯月が控えめに声をかけてきた。
「失礼いたします。姫様、安倍昌浩様がお見えになっております」
「昌浩が?……こちらにお通しして」
「かしこまりました」
ペコリ、と頭を下げてから足早に去っていった。
昌浩が訪ねてきていることを聞いたは、また晴明様から何か頼まれたのかしら、と思っていた。
しばらくして卯月に案内されてくる昌浩たちの姿が見えた。昌浩の肩に物の怪のもっくんが乗っている。
その後ろにまだ幼い子供の姿をした男女の神将がいた。
さらに離れた後ろにはが来るのを心待ちにしている六合の姿も見えた。
「彩W――」
驚きに目を見張ったはぽつり、と呟いた。いつも一人でくるはずの六合が今日は昌浩たちと一緒にのもとを訪れているのだ。
「姫様、お連れいたしました」
卯月の声で呆然としていたは我に返った。
「ありがとう。私が呼ぶまで下がっていてください」
「わかりました。何かあればお呼びください」
前のときは違い思いのほかあっさりと承諾すると、昌浩に向かって軽く頭を下げてからその場を後にした。
卯月の姿が見えなくなったのを確認してから、昌浩たちを御簾の中に招き入れた。
「様、こんにちは」
「こんにちは。お久しぶりですね。今日はどうしたのですか?」
昌浩が代表して挨拶をした。それを笑顔で返したは尋ねた。
「お言葉に甘えて遊びに来ました」
「まあ。それは本当ですの、六合?」
再度確認のためには六合を見つめた。の言葉に六合は微かに頷いた。
「それは嬉しいですわ。あの、それでそちらのお二人は?」
昌浩の隣にいる男女の子供を見つめながら尋ねた。昌浩が答えるより早く太陰が口を出した。
「はじめまして、姫。私は十二神将が一人、太陰。よろしくね」
「同じく、十二神将・玄武。よろしく頼む」
「太陰と玄武ですね。こちらこそよろしくお願いします」
元気よく言う太陰に続いて、玄武も挨拶をした。それを聞いたが穏やかな笑みを浮かべて答えを返した。
それからそれぞれ腰を下ろした。
の左隣にいつものように六合が腰を下ろし、続いて昌浩、もっくん、太陰、玄武と並び、囲むように座り込んだ。
(それからもっくんが話し出して……)
改めて考えてみると、が話しかけるまで六合は一切言葉を発していない。
やっぱり何かあったのだろうか、それとも自分が何か怒らせるようなことしてしまったのだろうか、とは不安でしかたがなかった。
そのせいで昌浩たちの会話がまったく聞こえていない状態であった。
ふいに名を呼ばれてはハッ、とした。
「、どうだった?」
「えっ?どうだったって、何がですか?」
一人考え込んでいたは、突然そう言われてもいったい何のことを言っているのだかさっぱりわからなかった。
まったくわからないといった表情でもっくんを見つめているに、しかたがない、もう一回だけ見せてやる、と言った。
「よ〜〜く、見てろよ」
そう言うと勢いよく跳躍した。後方に二回転すると、シュタ、と音をさせて見事に着地した。あまりの見事さにはしばし呆然とした。
見事に着地したもっくんはすかさずに尋ねた。
「、どうだった?オレ様の華麗なる技は!!」
「す、すごいですわ。もっくん!!」
思わず拍手を送った。他のみんなも一緒になって拍手を送り、それぞれ感想を述べている。
「やるじゃないの」
「うむ、見事だった」
「すごいよ、もっくん。彰子にも見せてやりたかったな〜〜」
みんなからの賛辞にもっくんは、二本足で直立して胸を反らしていた。は昌浩が言った『彰子』という名に引っ掛かりを覚えた。
「彰子?」
の言葉に一同が一瞬動揺を見せた。何と答えたらいいか迷っている昌浩を尻目にもっくんが説明した。
「今安倍の邸で預かっている某家の姫の名だ。
ちなみにと同じ見鬼の才の持ち主でもある」
「まあ?そうなのですか?」
「あぁ……」
もっくんの説明に素直に納得したは、ふと思い出した。確か同じ名前の姫がいたような……。
「そういえば、先日入内なさった藤原道長様の一の姫君も確か『彰子』様とおっしゃましたよね」
一同に緊張の色が走った。が、次のの言葉にガクッ、と肩を落とした。
「入内なさった姫君と同じ名前だなんて……、偶然ですね」
穏やかな笑みを浮かべていた。一同の心配はどうやら取り越し苦労で済んだようだ。
そんなの様子を見ていた六合は、以外に鋭いようで案外鈍いのだな、と新たな一面を発見して驚いた。
「一度お会いしてみたいですわね。その『彰子』とおっしゃる方に……」
「えっ?それ本当ですか」
昌浩が思わず聞き返した。
「えぇ、本当です。だめかしら?」
「いえ、そういうわけでは……」
笑顔で答えるに昌浩は少し困った顔をした。隣にいるもっくんに小声で話しかけた。
「大丈夫かな〜〜、彰子に会わせたりして。彰子の正体がバレたりしないかな?」
「大丈夫だろう。
今の説明でも気づいてなかったんだし、会ったところそう簡単にわかりはしないだろう」
「それもそうか。でも彰子をこっちに来させるわけにもいかないよね?」
「それはさすがにまずいだろう。こうなったらにこっちに来てもらうしかないな」
「そうだよね」
二人でぼそぼそと相談を終えた昌浩は、に視線を戻し答えを返した。
「様、どうぞ彰子に会ってあげてください。
彰子も様にお会いしたがっていましたし――」
「まあ、本当ですか?嬉しいですわ」
「ただ……彰子をこちらに来させることはできないので、様が家にいらっしゃるということでもいいですか?」
素直に喜ぶに昌浩がおずおず、と尋ねた。しかし昌浩の予想に反してはあっさりと答えた。
「別にかまいませんわ。
それにこちらからお会いしたいと申しているのです。
こちらから伺うのが礼儀というものでしょう?」
「はい、ありがとうございます!!」
「よかったな、昌浩」
勢いよく頭を下げる昌浩にもっくんが肩をポン、と叩いた。
そんな和やかな雰囲気の中に一人だけ、不機嫌なオーラを発し続けている六合に気づいたもっくんは、そろそろやばいな、と思った。
を除く三人も体をやや緊張させている。
「昌浩、そろそろ帰るか。
彰子も待っているだろうし、のことを早く知らせてやったほうが喜ぶぞ」
「そうだね。帰ろうか」
二人の言葉に太陰と玄武は頭を縦にこくこく、と振り頷いた。
「……ということなので、帰ります」
「そうですか、わかりました。彰子様によろしくお伝えくださいね」
「はい」
では、と立ち上がり部屋を後にした。途中、振り返ってこちらに手を振ってきた太陰に手を振って返した。
昌浩たちの姿が見えなくなると、六合のほうに振り向き呼んだ。
「六合――?」
六合の傍まできたが呼びかけると、六合がの腕を強く掴み、自分のほうへ引き寄せた。そして肩に顔を埋め、背中に腕を回してを強く抱きしめた。
微かにが愛用している梅花香の香りがする。突然のことには抵抗する暇もなく思わず息を呑んだ。
「……彩Wだ」
抑揚に欠けた声で囁いた。
わずかに怒気を含んでいる声で答えた。はあっ、と自分の間違いに気づいた。
二人でいるときは六合のことを『彩W』と呼ぶことが暗黙の了解となっていた。
しかしは先ほど『六合』と呼んでしまった。
「ごめんなさい……」
自分が悪いと思ったは素直に謝った。に対して怒っているわけではない六合としては、返答に窮した。
あれこれと考えたが、素直に言ったほうが無難だろう、と思い答えた。
「……に対して怒っているわけではない。だから謝る必要はない」
「えっ?ではどうして?」
からは六合の顔は見えないが、返答に困っているであろう顔が容易に想像できた。
今日の出来事を振り返り、はあることに気がついた。
「ねぇ、彩W。もしかして、みんながいたから機嫌が悪かったのですか?」
の言葉にピシッ、と体を固まらせた。
無言のまま体を固まらせているのは肯定を意味しているのだと、今まで経験から充分にわかっているはくすくす、と声を立てて笑い出した。
その様子に六合は顔を上げ、わずかに顔を歪めてを見下ろした。
「……笑うな」
「だって……。ん……っ」
未だに笑い続けているに、少しばかり苛立った六合は素早く顎を持ち上げ、やや乱暴に口付けた。突然口を塞がれたは大きく目を見開いた。
の唇を十分に味わってから六合は顔を上げ、呆然と自分を見上げているにニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。
六合の顔がゆっくりと離れていく様子を、は呆然としたまま見上げていた。
少しの間をおいて理解したは、六合を見上げたまま頬を赤く染めた。
その様子に満足そうに六合が穏やかな笑みを浮かべていた。
安倍邸に帰りついた昌浩一行はまっすぐに昌浩の部屋に向かった。
部屋には昌浩たちの帰りを待っていた彰子が笑顔で皆を出迎えた。
「おかえりなさい」
「ただいま、彰子」
部屋の中に入りながら返事をし、所定位置に腰を下ろした。他の三人もそれぞれ腰を下ろす。
「それでどうだったの?」
「あっ、そうそう。
様に彰子のことを話したら、ぜひ一度お会いしてみたい、って言ってたんだ」
「それ本当?」
昌浩の言葉に目を大きく見開き、彰子は聞き返した。彰子の喜びように少し困った顔で告げた。
「本当だよ。様が彰子を訪ねに家に来るって、おっしゃってたんだ。
ただ詳しい日時はまだ決まってないんだけど……」
そうなの、それは残念ね、と言おうとした彰子を遮り、ふっ、と姿を現した六合が答えた。
「三日後に来るそうだ。夕刻前には来ると言っていたが……」
「へっ?六合?」
「お前、いつの間に……」
突然に姿を現した六合に一同が驚いた。六合は平然といつもの無表情を浮かべてその場に腰を下ろした。
「それ本当?」
自分を見つめている彰子の問いにわずかに頷き、肯定を表した。彰子はパッ、と顔を明るくさせた。
「三日後が楽しみだわ――。ねっ、昌浩」
「そうだね」
彰子の喜びように昌浩は穏やかな笑みを浮かべた。
何やら二人の世界に入ってしまっている様子にもっくんは深いため息を吐いた。
「オレらは無視ですか……」
もっくんの言葉に太陰と玄武も、うんうん、と首を縦に振り、同意した。
和やかな雰囲気の中、昌浩は立ち上がった。突然立ち上がった昌浩を疑問に思った彰子が尋ねた。
「昌浩、どうしたの?」
「一応、じい様にも知らせておいたほうがいいと思ってさ。
たぶん、いや絶対に!!知っているとは思うけどね……」
「俺が知らせてこよう――」
力説している昌浩を尻目に音もなく立ち上がると、すっ、と姿を消した。
六合が知らせてくれるというのならば、立っていてもしかたがないか、と昌浩は腰を下ろした。
六合が部屋から出ていったことでわずかに体を強張らせていた太陰と玄武は、緊張が解けたようでのことを事細かに話した。
二人が話している、と言ってもほとんど太陰が話しており、時々玄武が相槌を打つぐらいであった。
音もなく背後に現れた六合に、そのままの状態で晴明は声をかけた。
「六合、どうした?」
「……三日後、藤原の姫に会うためにが訪ねて来る――」
晴明の背後で仁王立ちしたまま、抑揚に欠けた声で答えた。
その答えに今まで動かしていた手を止めて、庭に目を移した。
「六合、お前はそれでいいのか?」
「何がだ?」
「様が我が家にお越しになれば、他の者たちがうるさいぞ」
晴明の言葉にわずかに顔を曇らせた。が、あっさりと答えを返した。
「が望んだことだ――」
そう告げるとすっ、と姿を消してしまった。晴明の傍に隠形して控えていた神将たちがざわざわ、と騒いでいた。
(何やら、おもしろいことになりそうじゃわい――)
騒いでいる神将たちを尻目に晴明はくつくつ、と小さく笑い声を立てていた。
三日後――。
牛車に乗って訪ねてきたは、六合に横抱きされて(所謂お姫様抱っこというやつである)牛車を降りた。
その様子を昌浩ともっくんと共に少し離れたところで見ていた彰子は、ただ呆然と見つめていた。
出迎えた晴明と軽く挨拶を交わしてから、案内されては昌浩の部屋へ向かった。
晴明の後ろを歩くの横には六合が傍についていた。
昌浩の部屋まで来ると晴明は孫である昌浩に声をかけた。
「昌浩、様がお見えになったぞ」
「様、こんにちは」
「こんにちは」
元気よく顔を見せた昌浩に穏やかな笑みを見せ、挨拶をした。
「昌浩や、後は任せたぞ。それでは様、ごゆっくり」
「あっ、はい。ありがとうございます」
ペコリ、と頭を下げた晴明に、も慌てて頭を下げた。どうぞ、と昌浩がを部屋の中に招き入れた。
部屋に入ると自分よりも年下であろうと思われる姫が端座していた。昌浩がその姫の隣に腰を下ろした。
の隣にはいつものように六合が傍にいる。四人は向かい合わせに座っていた。
一人だけ四人から外れているところに腰を下ろしているもっくんは、困った表情を浮かべていた。
(あ――、オレだけ一人?お邪魔ですか?)
和やかな雰囲気の中、場違いのような気がしてそっ、と部屋を出た。もっくんが部屋から出て行ったことに四人は気づきもせずに話を進めていた。
「初めまして彰子様、お会いできて嬉しいですわ」
「初めまして様、私もお会いできて嬉しいです」
お互いに穏やかな笑みを浮かべて挨拶を交わした。二人の様子を昌浩と六合は優しい眼差しで見つめていた。
の姿を一目だけでも見てみたい、と神将たちがそっ、と昌浩の部屋を覗いていたのはまた別の話である――。

予想通りに前作より長くなってしまいました「訪問」編をお届けしました。
いかがでしたか?
今回微妙なところで終わっておりますが、許してください!!
これ以上書くと本当に長くなってしまって、読んでくださる皆様方にご迷惑を
かけてしまうのです。
だって、読むの大変でしょう?(えっ?そんなことない?)
続きは次回に持ち越します。ごめんなさい、待っててください。
この作品はあるサイト様に投稿させていただいたものを修正・加筆したものです。
それでは次の作品でお会いできることを祈って――。
2004.10.9 水原 琳